相続分が確定するまで

相続は民法によって定められています。ここでは、相続分が確定するまでの全体像を把握できるように、相続人の順位、相続分、遺産分割協議、遺留分侵害額請求のポイントを分かりやすく解説します。
1.相続順位(誰が相続人になるのか)
相続人の範囲は民法の規定で、配偶者は常に相続人となること、血族相続人は定められた順位で相続人になることが定められています
◇相続順位
- 配偶者 :常に相続人
- 子 :第一順位(子がいない場合は孫(相続対象の子の子))
- 直系尊属 :第二順位(子がいない場合)
※直系尊属の中では父母、祖父母、曾祖父母の順 - 兄弟姉妹 :第三順位(子、直系尊属がいない場合)
◇代襲相続について
子がいない場合は孫(相続対象の子の子)が子の代わりに第一順位の相続対象となります。 これを代襲相続といいます。
2.相続分(どれだけ財産を受け取れるのか)
遺言がある場合は、その指定の相続分が法的効力を持ちます(指定相続分)。一方、遺言がない場合は民法で定められた割合(法定相続分)(民法第900条)を適用します。
◇法定相続分の主な組み合わせ
- 配偶者のみの場合:全部 (子のみ、直系尊属のみ、兄弟姉妹のみも同じ)
- 配偶者と子の場合:配偶者と子で1/2ずつ
- 配偶者と直系尊属の場合:配偶者2/3、直系尊属1/3
- 配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4
同じ相続順位の相続人が複数人いる場合(配偶者以外)の相続分は、その相続分を複数人の数で均等割りします。
3.遺産分割協議(遺言がない場合の話し合い)
遺言書がない場合は、法定相続分で遺産を分割するのが原則ですが、必ずしも法定相続分通りに分ける必要はありません。遺産が現金のみとか、不動産でも売却して現金化して分ける等の場合は、法定相続分で分割する事例が多いと思われます。しかしながら、相続人の一人が不動産に住み続けるとか、介護の寄与分を考慮するなど特別な事情があるケースも多々あり、その場合はその事情を十分考慮する必要があり(民法第906条)、相続人間の協議(遺産分割協議)のうえ、分割方法を決定します。また配偶者は、居住する不動産を確保すべく、配偶者居住権を主張することができます。
◇配偶者居住権とは
民法改正(2020年4月1日施行)で、配偶者が「土地建物は所有しないが建物に無償で終身住み続けられる権利(配偶者居住権)」を取得できるとする規定の制定がなされました。これは配偶者を保護し、居住環境を確保するための制度で、この制度により、自宅の所有権と居住権が分離され、配偶者は住まいを確保しつつ、他の財産(預貯金など)も相続しやすくなります。この権利を取得するには、遺言でも遺産分割協議でもどちらでも設定することができます。
4.遺留分侵害額請求(最低限の取り分を守る制度)
遺言書がある場合でも、特定の相続人に大部分の財産が分割されているなど、偏った遺言の内容の場合、相続人(兄弟姉妹以外)は遺留分侵害額請求権を行使することができます。これは、受遺者または受贈者に対して、相続の開始及び侵害があったことを知ったときから1年以内に行います。
◇遺留分とは
遺留分とは兄弟姉妹以外の指定相続人が最低限受け取ることが法的に保障されている取り分のことです。
◇遺留分の割合
遺留分の割合は、配偶者、子の場合は遺産全体の1/2で、父母のみであれば遺産全体の1/3で、最終の受け取り分は法定相続分を乗じます。
遺留分の例
①配偶者と子が二人の場合
- 配偶者 :1/2×1/2=1/4
- 子 :1/2×1/2×1/2=1/8ずつ
②父母の二人のみの場合
- 父、母:1/3×1/3×1/2=1/18ずつ
◇手続
遺留分を請求するには、法的には意思表示のみで成立しますが、一般的には当事者間において内容証明郵便などで直接交渉しますが、合意が得られない場合は、遺留分侵害額の調停請求を家庭裁判所に申し立てることになります。
5.まとめ
遺言書を作成する場合、相続分においては法定相続分を踏まえつつも、被相続人との家族関係、相続人の生活状況、不動産の有無、寄与の程度など、さまざまな事情を考慮する必要があり、単純にはいかないことも頭に入れておかなければなりません。 相続人全員が納得できる形に近づけることが、被相続人の想いを実現するために重要です。
専門的な判断が必要になる場面も多いため、事前のご相談をお勧めします。

